食品が有害であるということ…5 [食の安全、安心]
固有の毒性の問題とその摂取量の問題について
1~4までのところで書きました
次に、食品が有害であると規定するための条件としては「食品中での存在形態」にも由来します
このことでよく講演で使うのが「黄色ブドウ球菌」です
これは一番日常的に存在する食中毒菌で
ヒトの傷などの化膿しているところから出てきたりします
ほかにも粘膜質の鼻の穴、目、耳、口などから排出されるため
よく起こるのがおにぎりなどの食品で発生します
それ以外では案外知られていなかったんですが、豚の頭から検出した例があります
この黄色ブドウ球菌は、それ自体問題があるわけではなく
これが増殖する過程で「エンテロトキシン」という毒素を産生するんです
このエンテロトキシンが食中毒の原因になります。
症状は比較的軽く嘔吐が中心で、食べてから30分~2時間くらいで発症します
これはヒトの体が毒素を検知し、それを排斥しようとする、いわゆる生理作用とでも言うものです
ですから、黄色ブドウ球菌のままでいてくれれば問題は起こらない
それが増殖するからエンテロトキシンが産生される
その存在形態に変化があったことで、有害性が発揮されたということになるんです。
このことは「サバアレルギーと呼ばれる症状」にも当てはまります
ご自分が「サバアレルギー」だと思い込まれている方の多くは、実際にサバのたんぱく質からのアレルギーではなく、「ヒスタミン中毒」という可能性が非常に高いんです。
それまでどうもなかったのにある日突然に発疹などが出たという方は、おそらくそうです。
それも多くの方の場合、居酒屋や外食で起こっていることが多いと思います
これはもともとサバに含まれているヒスチジンという物質が、ヒスタミンに変化したために起こったもので、風邪薬などに「抗ヒスタミン剤」とか言うのがあるのをご存知だと思います。
このヒスタミンに弱い方は案外と多いんです
これがどうやってヒスチジンからヒスタミンに変化するか
それはモルガネラ菌や大腸菌などの微生物によって変化します
なぜその微生物が増殖するのか
簡単なことです。
ご家庭では買ってきてすぐにサバを焼いたり煮たりして食べられると思います
もしくはすぐ冷凍して食べる時に調理する
基本的に鮮度が守られているわけです
しかし居酒屋とか飲食店になるといつ、どれだけのお客さんが来られるかわからない
だからいつも準備しておく必要がある
でも残ってしまう…
要するにこのような菌はどこにでもいる菌です
手洗いが不十分であったり、道具の洗浄が不十分であればすぐに付着し、増殖します
これによって古いサバを使って料理されたために発症しているのです
微生物の間は生き物ですから加熱すれば死滅します
しかしエンテロトキシンのしてもヒスタミンにしても、化学物質です
ですから加熱では分解しない、それで問題が起こるんです
このようにその食品のなかでどんな形態で存在しているかで
安全性が高いか有害性が高いかということにも関係してくるんです。
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そうだったんですか。。。 黄色ブドウ球菌って。
お話を聴く限りでは対処をきっちりすると大丈夫ですね。
食材は新鮮が一番です。
by 夢一番! (2010-08-01 12:05)
土壌菌のセレウス菌嘔吐型も同じように増殖過程で毒素を産生します。
by coop92050 (2010-08-01 12:34)